得ようとしている化合物が既知化合物でなかった場合は、新規化合物として取り扱う必要があります。新規化合物を合成する場合は、既知の類似化合物を手がかりに分子デザインを設計し、合成ルートを考えねばなりません。
既知の類似化合物を調べる際は、化合物のデータベースが役立ちます。はるか昔からデータベースは存在してきました。データの量としては膨大ですが、現在はオンラインの検索システムで速やかに閲覧できるようになっています。
類似化合物の合成ルートや反応の詳細な条件は、網羅的に調べる必要があります。候補となる合成ルートをピックアップしたら、新規化合物の合成に応用できないか検討しましょう。なお、検索システムには、Reaxys・SciFinder・STN などが挙げられます。
新規化合物を合成するときは以下の2ステップを踏みます。
分子デザインの設計をする際には、構造式が重要です。類似する既知化合物の構造をベースに、目的の機能を発現しそうな分子デザインを考えてみましょう。たとえば、アルキル鎖の長さや分岐が変わると、各種溶媒への溶解性や、融点や沸点などが変わります。すなわち、官能基を少し変えるだけで、化合物の特性を変えていけるというわけです。
また、目的の機能が発現するかだけでなく、本来の用途に使えるかどうかも検討が必要です。たとえば、経口内服薬に利用する新規化合物を合成するとしましょう。新規化合物が素晴らしい機能を発現しても、人体に対して深刻な副作用を与える、消化吸収を妨げるといった特性があれば、せっかく作り出した化合物が利用できません。
アラート構造にも気を付けましょう。アラート構造とは、毒性を発現する可能性がある構造を指します。アラート構造を回避しつつ新規化合物を合成するためには、高度な専門性が必要です。
新規化合物の合成デザインが決まったら、合成ルートを考えましょう。一般的には、逆合成解析により合成ルートを決定していきます。
逆合成解析では、新規化合物の分子デザインから逆行して合成ルートを考え、最終的に原料まで考えます。量産化を考えると、市販され簡単に手に入る原料がおすすめです。調達が大変で高コストな原料では、量産に踏み切ったときに在庫切れになる恐れがあります。
公益財団法人「かずさDNA研究所」は、特定の生物に存在する新規化合物(未知化合物)を網羅的に探索できるデータベース「レポジトリ」を開発し、公開しました。レポジトリは「食物」「植物」「万物」の3つに大別されており、それぞれのデータベースは誰でも閲覧・検索できるようになっています。
未知化合物を見つけた際、特定の化合物と同じか似たような特性がある、などの情報を得られるようになり、様々な研究に役立てるようになりました。
受託合成に対応する代表的な
化合物「有機化合物」と有機合成とは?