フロー合成は、従来の化学合成で用いる容器(反応釜やフラスコ)を使用せず、微細な流路に原料を流し込むことで化学反応を行う新しい化学合成技術です。原料から製品への流れの中で化学反応を起こす方式で、入口で原料を仕込んで出口で回収し製品化できる製造ラインのようなしくみです。製品に余計な滞留時間がなく、できたら都度回収できるのが特徴です。
そもそも化学物質の生産方法は、バッチ式とフロー式に大別され、現状ほとんどの合成がバッチ式によって行われています。バッチ式では各段階で中間体の単離・精製操作を繰り返すため、余分なエネルギーや労力を必要とし、廃棄物が多量に排出されます。一方、フロー法はバッチ法に比べてエネルギー生産性が高く、かつ、廃棄物の排出も少なく抑えることができるため、近年注目されています。
メリットだらけのフロー合成ですが、デメリットや問題点はあるのでしょうか。
以上が挙げられます。デメリットというよりは、今後の課題と言えるでしょう。
また「反応装置の小型化が容易で、大規模な施設が不要」というメリットがある反面、フロー合成のための設備投資費は必要になります。
これは、現状のバッチ式の設備が使用できないこと、装置メーカーが限られているため、そもそも装置自体が高額なことが要因です。 しかし、開発スピード短縮、原材料費削減、人件費削減可能と考えられており、フロー合成のほうが最終的にコストは抑えられると考えることができます。
ここでは、本サイトTOPページでも紹介しているナード研究所の事例をいくつか紹介します。
ナード研究所は幅広い合成技術で企業や研究機関の研究・開発支援を行っており、2007年からフロー合成研究にも取り組んでいます。マイクロリアクターや多段連続式撹拌槽型反応器(多段CSTR)を利用して、連続プロセス開発を支援。要望に応じて柔軟なカスタマイズが可能、kg製造にも対応しています。
ナード研究所のフロー合成において、実際にどのようなことを行っているのか、いくつか事例を紹介します。
爆発性試薬を利用した反応において、バッチ条件では困難な高温条件にて、キログラム製造を実施。
カラムに触媒を充填し、接触水素化反応を検討。
塩基に不安定なヘテロアリルボロン酸を利用したクロスカップリング反応における連続製造を多段CSTRの一種であるCoflore ACR-100(右写真)により実施。
液-液二相反応における効率的な撹拌、ヘテロアリルボロン酸の分解抑制により、1日1.3kgの生産に成功しています。
光反応は、バッチ式反応装置で行うことが多い反面、反応液の温度が上がると反応スピードが大きく低下し、反応に時間がかかります。電力消費が大きくなり、バッチごとの処理の際にランプをこまめにONOFFすることで、ランプの寿命が短くなるなどの問題があります。
ナード研究所では、フェナセン類の合成において、フロー式光反応の開発を行い、バッチ式と比較して反応時間の短縮、収率の向上効果を確認しています。 フロー式光反応装置によって、光反応の特性に合わせて、適切な手法を選択できます。
フロー合成は、環境負荷の小さい合成法ということで数年前に国から発表があり、従来のフラスコを利用する方法より連続生産しやすいことから、国内だけでなく世界的にさまざまな企業が取り組んでいます。とくに中国では国策的に力を入れていて、次々に設備が導入されている状況です。 日本でも興味を持たれているお客様は増えていますし、業界的にも話題になっています。
ナード研究所でも、フラッシュケミストリ(超高速反応)、極低温反応の回避、高温反応、高圧反応、不均一反応、気液、固液、気固液反応をはじめ、精密反応制御、不安定中間体の活用、安全性向上、連続プロセスで困難なスラリーの取扱いや連続晶析などに効果を確認しています。
どのくらい加熱するかや、パラメーターを出すのが最初は難しいところですが、今のところ少量であればフロー合成の方が確実にスピーディですし、遠くない将来、フロー合成に置き換わっていくことは確かなので、ナード研究所では今から注力しています。
グリニャール反応 | アジド化反応 |
ジアゾ化反応 | ニトリル化反応 |
酸化反応 | 還元反応 |
トリホスゲンの利用 | 鈴木-宮浦クロスカップリング反応 |
アニオン重合 | 爆発性試薬の制御 |
接触水素化反応 | カラムリアクター |
銅触媒リアクター | 高温高圧反応 |
高薬理活性化合物 | 塩析出反応、連続晶析(冷却法、貧溶媒法) |
株式会社ナード研究所は、ファインケミカル合成や機能性材料の開発など、有機化学分野における研究・開発の受託や提案、技術コーディネートや製造まで幅広く対応している企業です。 多様な分野の研究開発で豊富な実績を誇り、次世代を見据えた数多くの研究に取り組んでいます。
ナード研究所の魅力は、研究員が最初からお客様と対応することで、直接技術のやり取りができること。2022年6月調査時点で約100名の研究員が在籍しており、 研究員が最初(初期対応、御見積)から最後(納品、報告)まで一貫して対応するため、スピーディ。研究員と一定期間契約できるFTEにも対応し、研究開発をサポートします。
分析装置や合成設備が豊富に整っているため、対応できる企業が少ない無機合成、高分子合成をはじめ、化学合成全般に対応ができるのが強み。合成処方が決まっている化合物はもちろん、合成処方が定まっていない化合物など、ゼロベースから相談できる企業です。
本社所在地 | 兵庫県尼崎市西長洲町2丁目6番1号 |
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受託合成に関わる関連会社 | 株式会社ナードケミカルズ(NARD CHEMICALS, LTD.) |
事業内容 | 化学物質の受託合成、受託製造、受託研究 医薬品、有機EL材料、有機半導体、電池材料の研究開発 |
設立年 | 1972年 |
問合せ・連絡先 | 06-6482-7010 |